詩、朗読 その1


『紅い桜』

咲いた 咲いた
桜が咲いた
満開の桜が咲いた
紅く 温かく 冷たい桜が咲いた

舞った 舞った
桜が舞った
枝垂れた桜が舞った
紅く 冷たく 温かい桜が舞った

散った 散った
桜が散った
零れるように桜が散った
紅い 緋い 赤い桜が散った


次咲くのは白い桜でありますように。

『梅雨』

しんしんと 雨が降っています。
じめじめと 心が荒みます。
ひらひらと 紫陽花が散っていきました。

はらはらと 涙が溢れます。
ずくずくと 心を抉ります。
するすると 僕の手を離れていきました。

ふらふらと 雨中を歩きます。
ぐらぐらと 視界が揺れます。
がらがらと なにかが崩れていきました。

『ささやく』

モノクロの世界で君を想う。
天使と悪魔がささやいた。
僕は両手に生と死の林檎を持って、
罪と罰を受け入れる。
もう一度あの場所で君と出逢うために。

『マリオネットの夢』

箱の中で踊る。
マリオネットは永遠を求めた。
舞台上は夢の中。
見えない世界は現実で。

箱の中で廻る。
マリオネットは光を求めた。
見える景色は夢の中。
あやつる世界は透明で。

歯車は噛み合い、現実は動き出す。
マリオネットは微笑んだ。

『理想』

私は花を植える。
庭では色とりどりのチューリップが咲いている。
2ヶ月前に植えたのは白い花。
1ヶ月前に植えたのは斑の花。
今日植えるのは黄色い花。
庭一面のチューリップ。
枯れてくれればいいのに。
理想を求めているだけなのに。
なにがいけなかったのだろうか。
水を上げすぎたのかもしれない。
次は気をつけなくちゃ。
そして私はまた花を植える。

『狂い咲く』

「お願い。頼れるのは君だけなんだ。」
何回その言葉を聞いたかな。
返すって言って返ってきたことは一度もない。
騙されてるってわかってるのに、
嘘つかれてるってわかってるのに。
なんで断れないんだろう。
なんでやめられないんだろう。
君のことは愛してる。
でも君にとって私はただの都合の良いおもちゃ。

愛が返ってこなくて。君が帰ってこなくて。
「あぁ、捨てられたんだ」って気づいた。
なぜかひどく安心した。

窓の外にはダリアの花が狂い咲いていた。

『アルストロメリア』

蒼、赤、黄、白
自分の色を自分で見ることはできない
見る人が違えば見える色も違う
見る時が違えば見える色も違う
私が見ているこの色も時が変われば変化するのだろうか
夢百合草
人の数だけ夢がある
たくさんの夢を抱いて未来へと進もう
遥かなる幸福な日々を願って

『彗星の夜』

月がない静かな夜。
そっと空を見ると星々がこちらを見下ろしていた。
視線の端に星が流れた。
流れた方を見ると視線の反対にまた星が流れた。
いつの間にか視界いっぱいに星が流れていた。
まるで光のカーテンのようだった。
綺麗だった。
でも哀しくなった。
君はそこにいるのだろうか。
君はカーテンの先にいるのだろうか。
……僕も連れて行って欲しかったのに。

『強くてニューゲーム』

それなりに上手くできた。
それなりに生きて、それなりに死んで。
僕は何回「それなりに」を繰り返すのだろう。
つまらない。変化がない。
何においてもそれなりにしか出来ない僕は、
「それなり」以上のことはできなかった。
これは一種の呪いのようだと思った。
だから僕は考えた。それなりにしか出来ないのなら、
「それなり」以下のことはできるのではないか、と。
僕はおもわず表情を崩した。
マンションの窓を開け、僕はそのまま飛び出した。
次の僕は、きっと上手くやってくれる。