詩、朗読 その2


『アマイモノ』

口の中でしゅわっと溶けるわたあめのように。
白くてふわふわしているマシュマロのように。
君と僕はあいまいで。
僕と君はあやふやだった。
お菓子のように甘い甘い関係でいたかった。
チョコレートのようなドロドロとしたこの感情に、
僕は固く固くフタをした。

『観劇』

舞台に降り立った少年。

この舞台で彼はなにを思うのだろう。
彼はどう演じるのだろう。
私は見てみたいのだ。彼の世界を。
生きる全てを。想いの丈を。
カーテンコールで彼はどんな表情をするのだろうか。

さぁ、ブザーが鳴った。幕開けだ。

『陽だまり』

暖かい。
朝起きて布団にくるまっている。
眠気は覚めなくて隣にいる彼女は僕を離さなかった。
彼女はあどけない顔ですやすやと眠っていた。
まるで白雪姫のようだった。
僕はお姫様にそっとキスをして、
朝食を作りにキッチンへ向かった。

『移ろう笑顔』

春。桜の木の下で初めて君に出会った。
目を細め嬉しそうに笑う君が好きだった。

夏。向日葵畑で初めて君を抱きしめた。
「暑い」なんて文句を言って恥じらいながら笑う君が好きだった。

秋。椛(もみじ)の絨毯の上で初めて君とキスをした。
頬を染めて幸せそうに笑う君が好きだった。

冬。しんしんと降る雪の中初めて君と愛を育んだ。
痛いはずなのに「おいで」と優しく笑う君が好きだった。

季節は移ろう。
次の君の誕生日には…と思っていたけれど。
君を抱きしめることも、キスをすることも、愛を育むことも、もう出来ないんだね。
哀しくないと言えば嘘になるけれど悲しいと言っても嘘になる。
君のように愛しく(かなしく)笑う太陽に僕はそっと笑い返した。

『エゴイズム』

大きなエゴが私の世界を踏み荒らす。
彼らにとって私は非我(ひが)で小さな存在。

見えていないのかもしれない。
気づいてないのかもしれない。

でも私は気づいて欲しい。
私が今世界の中でもがいている事を。
私の世界を守ろうとしている事を。

私はこの世界で生きていきたい。

『溶ける。』

暑い。だるいほどの暑さが僕を包む。
ドロドロと体が溶けてしまいそうだ。
扇風機の生温い風が身体を舐めるように流れる。
畳に寝転がってチョコ味のアイスクリームを食べる。
口の中がひんやりとしている。
一瞬、冷たすぎて味がしなかった。
あぁ暑い。冷たくて、熱い。
ぽたりぽたりとアイスが溶けた。

『砂ノ時計』

刻限(こくげん)が迫る
落ちていく真砂(まさご)
砂海(さかい)で溺れ沈む夢
水底(みなぞこ)には記憶の華
流された沙子(すなご)は想い出と共に
砂ノ時計は止まらない
鼓星(つづみぼし)が空で傾いた

『すれ違う(男の子目線)』

「ねぇ、君、消しゴム落としたよ」
3年間で君と話せたのはたった一言だけだった。
1年生の1学期。たった1か月だけ君の横顔を見ていた。
廊下ですれ違うたび君の横顔ばかり見てしまう。
階段ですれ違うときそっと君から目を逸らしてしまう。
僕は最後まで君の横顔しか見ることができなかった。

『すれ違う(女の子目線)』

「ねぇ、君、消しゴム落としたよ」
3年間であなたと話せたのはたった一度だけだった。
1年生の1学期、たった1か月だったのに一度も顔を見られなかった。
廊下ですれ違っても、あなたから目を逸らしてしまう。
階段ですれ違うときだけは、あなたの横顔が見えた気がした。
私は最後まで、あなたの横顔しか見ることができなかった。