『移ろう笑顔』
春。桜の木の下で初めて君に出会った。
目を細め嬉しそうに笑う君が好きだった。
夏。向日葵畑で初めて君を抱きしめた。
「暑い」なんて文句を言って恥じらいながら笑う君が好きだった。
秋。椛(もみじ)の絨毯の上で初めて君とキスをした。
頬を染めて幸せそうに笑う君が好きだった。
冬。しんしんと降る雪の中初めて君と愛を育んだ。
痛いはずなのに「おいで」と優しく笑う君が好きだった。
季節は移ろう。
次の君の誕生日には…と思っていたけれど。
君を抱きしめることも、キスをすることも、愛を育むことも、もう出来ないんだね。
哀しくないと言えば嘘になるけれど悲しいと言っても嘘になる。
君のように愛しく(かなしく)笑う太陽に僕はそっと笑い返した。
『すれ違う(男の子目線)』
「ねぇ、君、消しゴム落としたよ」
3年間で君と話せたのはたった一言だけだった。
1年生の1学期。たった1か月だけ君の横顔を見ていた。
廊下ですれ違うたび君の横顔ばかり見てしまう。
階段ですれ違うときそっと君から目を逸らしてしまう。
僕は最後まで君の横顔しか見ることができなかった。
『すれ違う(女の子目線)』
「ねぇ、君、消しゴム落としたよ」
3年間であなたと話せたのはたった一度だけだった。
1年生の1学期、たった1か月だったのに一度も顔を見られなかった。
廊下ですれ違っても、あなたから目を逸らしてしまう。
階段ですれ違うときだけは、あなたの横顔が見えた気がした。
私は最後まで、あなたの横顔しか見ることができなかった。